突然の別れ
ぼくが起業したばかりの私を導いてくれた、ある会社の社長。
公私ともに親しく、会社での顔とプライベートでの表情—両方の姿を知る幸運に恵まれていました。
ある日の一緒に杯を交わした数日後、突然の訃報が届いたのです。
親近者だけの小さな葬儀の場で、私は社長の息子さんたちと言葉を交わしました。
親元を離れて暮らす20代の二人の青年は、近年の父親の姿をほとんど知らなかったのかもしれません。
「実は、お父さんはこんなに涙もろい人だった・・」
「社員を何よりも大切にして、みんなから慕われていた・・」
「奥様を亡くしてから、毎日花を買って変えていた・・」
ぼくの言葉に息子さんたちは静かにうなずいてくれていました。
同時に自分の心の奥から湧き上がってきたのは「この社長がどんなふうに生き、どんな人に慕われ、どんな想いを抱えていたのか。その証のようなものを、息子さんたちに見せてあげられたら…」という気持ちでした。
もう一つの別れ
そして、もう一つの別れ、それはぼく自身の息子と父との永遠の別れでした。
「息子のもっと才能や可能性を伸ばしてやりたかった」
「父ともっと孫の成長や旅行に連れて行ってあげたかった」
日々の暮らしの中で、共にいることが当たり前だと思っていました。
その大切な一日一日を、私はどれほど粗末に扱っていたのか。一緒に過ごす時間は無限にあると、どこかで思い込んでいたのかもしれません。
今、その息子が残してくれた犬のイチを通して、天国の息子に語りかけています。
イチの瞳に映る世界は、きっと息子も見ていた風景。イチと散歩する道すがら、息子の足跡を追いかけるように、毎朝歩いています。
人はいつ旅立つのか—誰にもわかりません。
でも、その人の心に宿る価値観や哲学、生き方の美学は、 形を変えて残すことができるのではないかと思っています。
ぼくの使命
『THE STORY』は、ぼくの様々な別れから生まれました。
お話を伺いながら、その方の日々の暮らしや考え方、感じていることを丁寧に紡いでいくこと。それがぼくの使命なのだと思っています。
会社の顔だけでなく、家族との温かな時間も、職人としての情熱も、一人の人間としての迷いや葛藤も。 そのすべてが、あなたという人間の本質を形作っています。
ぼくは、映像と深い対話を通じて、 あなたの内に秘められた「輝点」を見つけ出し、 大切な人々へと伝わる物語として紡ぎます。
『THE STORY』は単なる記録ではなく、心の継承です。
その輝きは、きっと誰かの心に届き、 新たな光となって未来へと続いていくと信じています。